アエテロゴ

<アエテ株式会社 ロゴ>

私がフリーランスとして独立する前、アートディレクターとして所属していたアエテ株式会社。その会社のロゴをデザインしました。アエテの社名ですが、会社設立時の社名は「株式会社カドー」、その後「株式会社カドーデザイン」と社名変更し、現在の「アエテ株式会社」となっています。

社名変更の理由は割愛させていただきますが、アエテという社名は代表の鈴木がつけました。アエテは日本語の「敢えて(あえて)」に由来します。デザインという行為は、強い意志を持った行為であり、それを端的に言い表した言葉として、「あえて」が相応しいと考えたからです。

代表の鈴木からアエテと名付けた理由を聞いた時に、すごく合点がいったのを覚えています。私たちデザイナーは、形を決める、色を決める、素材を決める、といったこれらの行為にはすべて理由があり、意志を持って決定しています。なんとなくカッコいいから、なんとなくキレイだからというような曖昧な感覚でデザインはやりません。

アエテのロゴをデザインするにあたり、たった4文字のアルファベットですが、この中に徹底的に「あえて」を注ぎ込んでいます。そして完成したのが上のロゴタイプです。

CLIENT アエテ株式会社
CREATIVE DIRECTOR アエテ株式会社
ART DIRECTOR / DESIGNER マツタケ ヨシヒロ(White andante)


アエテロゴ

<アエテのあえて─その1>

デザインをするにあたり、当初、既存のフォントをベースに検討していました。「あえて」という強い意志を表現するフォントとして太いサンセリフ体がいいと考えました。Frutiger(フルティガー)やFutura(フーツラ)をベースに、アウトラインに変更を加えていったのですが、最終的にいずれのフォントの輪郭も残ることなく、新しいラインによって、これらの書体は完成しています。

サンセリフ体の中でも、直線や円弧など幾何学的なラインで作られたものを「ジオメトリック・サンセリフ」と呼ぶのですが、アエテの書体もこのカテゴリーの書体になると思います。

ここで、アエテのあえて。

例えば、「a」と「e」のフォントの高さですが、「a」を21とした時、「e」は21.5となっており、2%とほど高い設計になっています。また、「t」は一般的には横棒が左右に出ていますが、ロゴとしては左側がノイズになると考え削除しています。このように高さ、幅、間隔など、あらゆるところを徹底的に検証し、デザインしていきました。


アエテロゴ

<アエテのあえて─その2>

アエテの書体は、設計する際のプローチとしてジオメトリック・サンセリフの設計手法をとっていますが、単純な幾何学図形を用いていません。例えば、「a」という書体。一見すると中央の水平ラインでシンメトリックな形状になっているように見えるかもしれません。しかし、水平ラインを境に上と下では曲率がわずかに異なっています。単純な楕円の組み合わせではありません。

また、この曲率の違いは、ディテールの処理の違いにつながっています。それが右の図です。緑の円の中に、拡大して見せています。上の方は、曲線と直線がそのまま交差していますが、下の方は、曲線と直線が交差する直前で水平なラインによって処理されています。これは、下の曲率の方が大きいため、そのまま直線と交差させると非常に鋭角な食い込みが生まれるためです。(左の図の赤と青のラインの違いからも理解できると思います)

この処理は、Frutigerの書体の中にも見られます。この一見するとわからない非常に微細なデザイン処理をFrutigerの中に見つけた時、フォントデザイナーに対して強い感動とリスペクトを感じざるを得ませんでした。フォントデザインを専業とされているデザイナーは、グラフィックデザイナーともまた異なる感覚を持った特殊技能だと個人的には思っています。

話を戻しますが、Frutigerに見られた微細な処理こそ、デザイナーの「あえて」であり、同様の処理をアエテの「a」にも取り入れました。


アエテロゴ

<アエテのあえて─その3>

企業やブランドによっては、コーポレートカラーやブランドカラーと呼ばれる独自の色を設定する場合があります。コカコーラと聞いて、赤を連想するように。

では、アエテのカラーは何色だろうかと考えました。アエテというデザイン会社は、プロダクトデザイナー、グラフィックデザイナー、コピーライターなど異なる技能を持った集団であり、クライアント毎に様々な提案をしています。アエテは赤や青といった特定のカラーを持つのではなく、クライアントの要望に応じて様々なカラーを打ち出せるのが強みです。そのように考えた時、すべてのカラーを持ったアエテは、黒になるのではないかと考えました。いろんな色が混ざると黒になるからです。

この考えは、名刺のデザインに反映されています。名刺の下に大きくアエテのロゴを入れているのですが、黒のインク1色でロゴを印刷したくないと思いました。なぜなら、アエテの黒は、様々な色が混ざって生まれる黒だからです。そこで当初、アエテのロゴの箇所だけ、リッチブラックと呼ばれる4色掛け合わせ(CMYKの混色)の黒で印刷をしようかと考えました。しかし、コスト面や印刷時の版ズレといったを懸念事項を考慮し、最終的には黒箔という処理に行きつきました。

その後、社員から「黒箔」ではなく「パール箔(光沢のある白)」でやりたいとリクエストがありました。黒箔にしたコンセプトからずれてしまうと思い一瞬躊躇しましたが、光の三原色(赤、緑、青)と考えれば、その重なったところは白になりますので黒箔、パール箔いずれも良しとしました。


アエテロゴ
アエテロゴ

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